シリーズ第1章・第3回目 尿臭・便臭を科学する ― 介護・トイレで悩ましいニオイの原因と対策

介護現場で実感する「消えない臭気」 ― プロも苦戦する実例と対応法

介護施設や在宅介護の現場では、毎日の清掃や換気を徹底してもなお「残り続ける臭気」に頭を悩ませることが少なくありません。これは単なる掃除不足ではなく、臭気成分の性質や環境への染み込みが原因となるケースが多いのです。ここでは実際に現場で報告される課題と対応策を紹介します。


1. 床や壁に染み込む「アンモニア臭」

尿に含まれるアンモニアは揮発性が高く、時間が経つと周囲の床材や壁紙、畳などに吸収されてしまいます。特に吸水性のある素材では、拭き掃除だけでは臭気が取れません。

対応法

  • 吸水素材のコーティングや防水シートで再浸透を防止
  • フミン酸や有機酸を含む消臭剤でアンモニアを中和分解
  • 定期的な素材ごとの「深部洗浄」を実施

2. オムツ交換や寝具に残る「便臭・複合臭」

便臭は硫黄化合物や脂肪酸、インドールなどが混じり合い、強烈で複雑な臭いを発します。オムツ交換や寝具の取り扱い時に一時的に空間へ拡散し、部屋全体にこもってしまうのが典型的な悩みです。

対応法

  • 換気だけでなく、臭気分子を分解できるスプレー型消臭剤を即時使用
  • 藍抽出物や植物由来の抗菌成分で細菌の分解作用を抑制
  • 寝具は高温洗濯や自然分解性洗浄剤で定期リセット

3. 清掃後も残る「バイオフィルム臭」

トイレや床の排水口周辺では、細菌がバイオフィルム(ヌメリ状の膜)を形成し、臭気物質を生み出し続けます。見た目にはきれいに見えても「なぜか臭う」という現象は、この微生物の活動が背景にあります。

対応法

  • 強い塩素剤で一時的に除去しても再発しやすいため、フムスエキスや酵素入り洗浄剤で分解・再付着を防止
  • 定期的なブラッシング清掃で物理的に膜を破壊
  • 水分滞留を防ぐための換気・乾燥対策

4. プロ清掃でも限界を感じるケース

実際、専門の清掃業者であっても「臭気の戻り」に悩むことがあります。これは、臭気成分が建材や家具内部にまで浸透している場合や、日常的な発生源が絶えない場合に多いといわれています。

このような場合には、化学的分解×物理的除去×予防策の多層アプローチが欠かせません。特に介護現場では「安全性」を重視した天然由来成分による対策が求められます。


まとめ

介護現場での尿臭・便臭は、単に「掃除をすれば解決する」ものではなく、建材や微生物、生活環境が複雑に関与しています。プロでも苦戦する難題ですが、科学的根拠に基づいた消臭・抗菌・防浸透対策を組み合わせることで、「消えない臭気」に対抗する道が見えてきます。

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