10. ホテルや旅館で求められる“無臭の快適空間”とは?
―データが示す「におい対策」の経営的価値と天然成分の実力
宿泊施設の印象は、視覚や接客だけで決まるものではありません。今、ホテルや旅館の「空気の印象」、すなわち“におい”が、顧客満足や再訪意欲に大きく影響していることが、各種の信頼性ある調査で明らかになっています。
とりわけ、**化学薬剤に頼らず、天然由来成分で実現する「無臭・清潔な空間づくり」**が、これからの宿泊業において重要な差別化ポイントとなりつつあります。
■ においで印象が決まる宿泊体験 ― 数字が示す現実
パナソニック社が2024年に実施した調査(宿泊経験者対象)によると、
**「ホテル・旅館でニオイが気になった経験がある」宿泊者は74.6%**にのぼり、空間のにおいは無視できない問題となっています。
さらに、「そのにおいが施設の満足度に与える影響は?」という問いに対し、
**「非常に影響する」が58.4%、「やや影響する」が30.5%、合計88.9%**が「においが満足度に関わる」と答えています(※1)。
とくに客室内で気になるにおいの上位は以下のとおりです:
- カビ臭(59.7%)
- ホコリっぽいにおい(48.9%)
- 建材・リフォームのにおい(17.4%)
浴室・トイレでも、
- カビ臭(46.5%)
- 排水・下水臭(42.4%)
- シャワーカーテンの生乾き臭(33.5%)
などが指摘されており、「におい」が宿泊者の心に強く残る要因であることがうかがえます。
■ 化学薬剤のにおいが、かえって“マイナス評価”になることも
におい対策として一般的に用いられるのは、塩素系除菌剤やアルコール、芳香剤などの化学薬剤ですが、こうした方法には以下の問題が潜在しています:
- 強い香りが他のにおいと混ざり、違和感や頭痛を引き起こす
- 芳香剤の香り自体が「不快」と感じられるリスクがある
- スタッフに手荒れ・呼吸器トラブルなどの健康被害をもたらす
これらの点を踏まえ、宿泊業界では「においをごまかす」のではなく、「においの元を自然に分解・無臭化する」アプローチへの転換が進んでいます。
■ 注目される天然由来成分 ― フミン酸やGSEの可能性
こうした背景の中、業務用消臭剤として注目されているのが、フミン酸(腐植物質由来の有機酸)やグレープフルーツ種子抽出物(GSE)を主成分とする製品です。
それぞれ以下のような特性があります:
- フミン酸:アンモニア、トリメチルアミン、硫黄系化合物などの臭気物質を吸着・分解。表面のバイオフィルムやカビの発生も抑制。
- GSE(グレープフルーツ種子抽出物):幅広い菌類に抗菌効果を示すとともに、柑橘系のわずかな自然な香りが清潔感を演出。
これらの成分は化学合成成分に比べて低刺激で持続性があり、導入施設の清掃スタッフからも「扱いやすく安心」と好評です。
■ 実際の導入効果と経済的メリット
清掃の最終工程で天然成分を活用するホテルでは、以下のような成果が報告されています(事例企業非公開・導入支援企業ヒアリングより):
- 客室レビューで「空気がきれい」「においがない」との言及が増加
- 清掃時間の短縮とスタッフ満足度の向上
- 敏感な外国人旅行者への対応強化
- 消臭対策に配慮した施設としてのブランド価値向上
さらに、DIME誌の読者調査(2024年)では、**「におい対策がしっかりされているなら、宿泊料金に1,000〜3,000円程度上乗せしても納得できる」と答えた宿泊者が35.4%**にのぼりました(※2)。
これは、におい対策がコストではなく投資であることを意味します。
■ 結論:空気を整えることが“おもてなし”の一歩に
においのない、自然で快適な空間は、宿泊者の滞在満足を左右するだけでなく、従業員の健康や働きやすさ、施設の評判や収益にも直結する「経営上の重要施策」です。
天然由来成分は「効果が弱い」わけではなく、“安全かつ確かな結果をもたらす”選択肢です。
これからのホテル・旅館には、ただ清掃するだけではない、「空気の質まで整える」発想が求められています。
引用元
※1: パナソニック株式会社「宿泊施設とニオイに関する意識・実態調査」2024年公開
https://news.panasonic.com/jp/topics/205863
※2: DIME「宿泊施設に求める“におい対策”に関する意識調査」2024年
https://dime.jp/genre/1883057/